きょう「文字・活字文化の日」
良書との出あいは
人生を変える
我らは戦う!
人権と
平和と
幸福のために!
人間の宣言を侵し
青年の生命を奪い
そして
母たちを苦しめる
権利の魔性と
我らは
断固と戦い続ける!
わが師・戸田城聖先生と
幾たびとなく語り合った
大事な一書が
フランスの大思想家ルソーの
『エミール』である。
その鮮烈な一節に
「圧政と戦争こそ
人類の
もっとも大きな
災厄ではないか」とあった。
私が十七歳のドキュメント
あの暗い暗い
苦しい苦しい
第二次世界大戦は
日本の大敗北で終わった。
時に──
昭和二十年(一九四五年)の
八月十五日である。
肺病の私は
本を読むのが好きであった。
いな
本だけが楽しみであった。
「良書を読むのは
良い人との交わりに
似ている」とは
アメリカ・ルネサンスの旗手
エマソンの言葉である。
「良書は
最良の大学の
かわりをする」
この哲人エマソンの確信を
オーストリアの作家
ツヴイクは
若き日の向学の指針とした。
私が夜遅くまで
読書をしていると
母からは
「身体に悪いよ」と
いつも心配された。
父からも
──兄たちは戦争から
いつ帰ってくるか わからぬ。
おまえだけは健康に──と
静かに本を閉じる
仕草をされた。
疎開先の西馬込から
詩情豊かな森ケ崎海岸の
近くに家へ移ったのは
終戦の直後であった。
戦時中
防空壕に入れて守った
多くの本なども どんどん
その部屋へ置くようにした。
一冊また一冊
宝の如く集めた蔵書を
私は後に
わが創価大学へ寄贈した
これが
七万冊の池田文庫である。
正しき活字文化を
興隆させゆくことは
野蛮な暴力に
打ち勝つ道であると
私は信じてきた。
当時 どの本から見つけたか
ある英知の言葉があった。
「波浪は
障害にあうごとに
その堅固の度を増す」
さらにまた
ある賢人の言には
「艱難に勝る教育なし」
いずれも
わが青春の座右の銘と決めた。
私は私の部屋に
この言葉を書いて飾った。
この忘れ得ぬ読書も
終戦の年
十七歳の時であったと
記憶する。
青春時代の思い出は
あまりにも懐かしく蘇る。
【聖教10/27・桂冠詩人の世界】
photo by Daisaku Ikeda