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【文学周遊】小泉八雲「生神様」 和歌山・広川町
一列また一列と稲むらは炎になって燃えあがった
日本経済新聞 夕刊 文化(10ページ)
2020/10/17 15:30
人のために、自分にできることを尽くす。
とっさにゆるぎなく、判断できる。
だからこそ、多くの人に尊敬され、大切に思われる。
「生神様」に登場するのは、そんな人物だ。
浜口梧陵が残した広村堤防。整備され美しい緑が覆う=松浦弘昌撮影
「生神様」は、日本における神様の概念を描いた短編だ。なかでも紀州の「浜口五兵衛」を描いている部分は、多くの目を集めてきた。
五兵衛の話は、大きな地震が起きたところから始まる。自宅が小高いところにあり、すぐに津波がやってくると予測する。だが下にいる村人たちは、気づかない。
みんなを助けなければ。五兵衛はちゅうちょなく、畑に積んであった稲むらにたいまつで火をつけ、村人たちを呼び寄せる。
この話……。小学校の教科書に載った「稲むらの火」として知っている人もいるだろう。そのもとになったのが小泉八雲のこの作品なのだ