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2020.9.27-5(3)

2020年09月26日 (土) 16:04
2020.9.27-

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土曜特集 デジタル・ミニマム社会
誰もが情報通信技術を使える
/安念潤司 中央大学教授に聞く
2020/09/26 4面

■(何が変わる)経済再生、地方創生促す/裾野広く、各分野に新たな事業

 「デジタル・ミニマム」社会が実現すれば、コロナ禍における経済成長、経済再生につながっていく。コロナ禍であっても、人間と人間とのつながりなしに経済はあり得ない。離れていてできなかったことが、デジタル技術を介することによってできるようになれば、経済にとってもポジティブな影響が出る。

 SNS(会員制交流サイト)やインターネットを今まで使わなかった人が利用できるようになれば、過疎の町にいても世界中の人を相手にビジネスができる。手の不自由な人をサポートするデジタル機器があれば、今度はそれを応用して足や首の障がいに、さらには視覚や聴覚の障がいにと、対応機器は広がっていく。デジタル化社会は、一つのターゲットから派生的にニーズが生まれやすい。裾野が広く、さまざまな分野で新規事業が起こるようになる。

 日本の企業は、他国と比べて「やさしい」「行き届く」ような技術に優れている。デジタル機器の使い勝手の良さでは、世界では負けていない。こうした強みを生かせば、デジタル技術を活用していない世界中の高齢者や障がい者、社会と距離を置く引きこもりがちの人に使ってもらえるはずだ。弱い人にやさしくすることは人助けにもなり、新たな産業の発展、雇用創出に直結する。

 ICTに弱い人でも使いやすい技術を開発する企業は、社会貢献とともに、巨大市場で利潤を追求して好循環に入るだろう。

■(どう進める)

 社会に貢献したくてもできない人の社会参加のためにデジタル・ミニマムの理念がある。デジタル・ミニマム社会は、「ローテクとしてのICT化」とも言える。難しい技術も単純な操作で使えるようにしていく。弱い立場の人に徹底して合わせていく考えだ。

 難しいデジタル用語を羅列してはだめで、分かりやすい言葉を使って理解してもらうことが大切。障がい者や高齢者など弱い立場の人の目線に合わせた発想を大事にしたい。例えば、「サインイン」と言われても分からない人は多い。官民挙げて、こうした点もとことん見直してほしい。

 誰がどこにいても、会話や連絡ができ、天気予報や緊急情報まで簡単に得られるデジタル・ミニマム社会では、オンラインで気軽に働くことも可能になる。高齢化率が高い地方でも、労働市場の活性化、新産業創出が起こり、経済の再生、地方創生につながっていく。

■(日本の現状)成長分野へ雇用シフト必要/専門人材は約50万人不足する

 経済成長をけん引するデジタル分野で人材が不足している。コロナ禍前から、人間の手仕事はロボットや人工知能(AI)に置き換わりつつあったが、コロナはその流れを一層速めた。

 民間シンクタンクの調べでは、日本における事務職の人員過剰は2022年に100万人超になるとの推計がある。一方で、デジタル技術を使える専門人材は50万人程度不足する。成長する分野への雇用シフトが経済成長には欠かせない。

 労働力の基盤が整えば、経済への波及効果も大きくなるが、日本ではデジタル技術の習得が遅れ気味だ。

 労働市場で求められる再教育の進捗を示す調査では、日本は経済協力開発機構(OECD)の加盟国で最下位。デジタル技能の教育プログラムや定期評価の仕組みが企業に整っていないことが浮き彫りになっている。この指標は、最大値1に近づくほどデジタル教育などが充実していることを示すが、日本は0・15で加盟国平均0・57を大きく下回る【グラフ参照】。

 一方、必要な労働力の磨き直しに向けては、ICTの活用から取り残された70代以上の高齢者や障がい者、引きこもりがちの人や外国人材への教育訓練がポイントになる。デジタル・ミニマムの理念の下、デジタルディバイド(情報格差)の解消を進めながら、これらの人々の労働市場への参加を促していくことが経済成長には必要だ。

「ローテクとしてのICT化」
... 2002 )として定式化することができるとすれば、一九九〇年代のアメリカ経済
は、日本の一九八〇年代とはまったく ... したがって、ニュー・エコノミーは要
注意であり、ハイテク関連のICT産業が主導する経済成長が持続的に本格化する
というのは「神話」にすぎないのである。第一に現実の経済は、ハイテクだけで
なく、ローテク産業も数多く存在するし、主要国ではかなり以前からサービス
産業が ...



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