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【大機小機】積み立て投資の王道
日本経済新聞 朝刊 マーケット総合2(19ページ)
2020/8/20 2:00
新型コロナウイルスの猛威に端を発した株価暴落は一時リーマン・ショックの再来を思わせる勢いをみせ、狼狽(ろうばい)売りに走る投資家の数も少なくはなかった。一方、その片隅で投資方針を維持する積み立て型の個人投資家の姿がみられ、長期投資への確信が芽生えつつある証しと受け止められている。
背景には、長寿社会において老後を生きるには現役時代からの資金づくりが不可欠だという国民的合意がある。「老後2000万円問題」が流行語になり、広く語り継がれていることからも分かる。
老後の資産形成にとって、長期投資の習得に寄与する良質な投資情報の価値は格別だ。具体的な実例があれば、さらに効果が高い。その好事例の一つが、米国連邦政府職員年金(TSP)のケースである。
加入者約550万人、総資産は約5600億ドル(約60兆円)と世界最大規模の確定拠出年金だ。その投資スキームは実にシンプルで、かつ分かりやすい。主なポイントは、以下の通りである。
第一に、投資先のファンドの数は5つで全てだ。ほかに退職までの期間の違いにより組み入れ比率が決まるライフサイクルファンドがあるが、やはりこれら5つのファンドを投資対象とする。
第二に、各ファンドの投資対象は大型株、中小型株、外国株、国内債、政府短期証券で、いずれもオーソドックスそのものである。
第三に、これらは指数に連動するインデックス運用であり、運用コストは最高0.06%と低廉であることだ。
第四に、ライフサイクルファンドの資産配分はメリハリが利いている。45年後から積立金の取り崩しを始める若い世代向けファンドでは、大型株48%、中小型株16%、外国株35%、債券等1%と、ほぼ全てが株式投資だ。
一方、積立金の取り崩しが始まる退職世代向けファンドでは、大型株11%、中小型株3%、外国株8%、債券6%、政府短期証券72%と安定運用に徹している。
長期投資の鉄則は、(1)投資期間の長さを武器にリスクに立ち向かう(2)分散投資でリスクを緩和する(3)低コスト運用に徹する――である。
TSPの投資スキームはどこまでもこの鉄則に忠実だ。まさに積み立て投資の王道そのものである。
(陰陽)