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〈社説〉 2020・8・14 あす終戦の日
絶対悪を直視する眼が未来を開く
AI(人工知能)を使った当時の写真のカラー化、VR(仮想現実)で戦争被害の様子を再現して可視化するなど、デジタル時代の戦争伝承が進む。
NHKは地方紙などと連携し、戦時中のエピソードを募集。アニメ映画の主人公と重ねた「#あちこちのすずさん」が反響を呼んだ。
戦争の非体験者しかいない時代が近づく中、新技術を駆使した挑戦には価値がある。
その上で、“どう伝えるか”と同時に、“何を伝えるか”が問われていることも忘れまい。
戦争には被害があれば、加害もある。両面に目を向けずして、日本の侵略で被害に遭ったアジア各国や世界から真に信頼される日は来ないだろう。
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著名な生物地理学者のジャレド・ダイアモンド教授は近著で、戦後のドイツと日本の歩みの違いに触れている。
ドイツが子どもたちにナチスの残虐行為を詳しく教えている一方で、日本は被害者意識を抱いた、と(『危機と人類』下巻、日本経済新聞出版社)。
75年前、戦争が終わった日は、日本の軍国主義に蹂躙された国の人々にとっては、悲惨からの解放の日だった。
戦時中、“何が起こったか、何が奪われたのか”。そして“何を起こしたのか。何を奪ったのか”。
終戦から時が遠ざかるほどに、双方を見つめる視野を広げたい。
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「原爆を落とす必要はなかった」――先日、米有力紙ロサンゼルス・タイムズに載った論説が注目を集めた。広島・長崎への原爆投下は戦争の早期終結のために必要だったとする見解が一般的な米国では異例の主張だ。
人種差別という社会問題に再び向き合う自国の現況を踏まえ、「負の歴史を見直している今こそ、日本の都市に対する核兵器の使用について、国民の間で率直な対話をするのにふさわしい時だ」(6日、NHKニュース)と。
人間は戦争を起こし、戦争は人間を狂わせる。だが、人間には相互理解を深め、平和な世界をつくる力もある。
突然、戦争は起こらない。平和の潮流を今いる場所で広げ続けたい。自分たちに都合がいいように過去を捉える歴史修正主義に陥れば、それは、他者の苦しみを顧みなかった植民地主義と同根である。
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池田先生は、かつての満州の一部に当たる黒竜江省の社会科学院一行との出会いに触れ、つづった。
「過去を直視することは自虐ではない。自省である。自省なきところに、未来は開けない。歴史を抹殺する者は、歴史に抹殺される。過去の過ちに学んでこそ、価値ある出発ができ、他国からも尊敬されるのだ。国民が誇りをもてる国になれるのだ」
あすは終戦の日。生命尊厳の哲学を胸に、人間主義の民衆運動を広げる使命をかみ締め、平和を誓う日としたい。