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◎【Deep Insight】香港を見殺しにしない
米ソ冷戦中の56年、共産圏だったハンガリーでは人々が民主化を求めて蜂起した。西側諸国は日ごろ自由の価値を唱えておきながら、ソ連軍が侵攻しても助けなかった。同じ失敗を繰り返せない。
だが、できることはある。国家安全法を廃止させるのが難しいとしても、中国に圧力を強め、少なくとも強引な法の運用を改めさせる道を探るべきだ。
国際社会には「成功例」もある。中国は2013年、東シナ海にいきなり防空識別圏を設け、上空を通る外国機は中国国防省の指令に従うよう義務づけた。これに応じない場合、緊急措置をとるとも脅した。
しかし、各国から猛抗議を浴びると「中国は防空圏を撤回こそしないものの、厳格な運用はひとまず見送り、いまに至っている」(日本政府当局者)。
むろん、防空識別圏と香港を同列には論じられない。ただ、この事例は中国といえども法の運用にあたり、国際世論を完全には無視できないことを示している。
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香港の域内総生産(GDP)は返還時には中国のおよそ18%だったが、いまや3%に満たない。北京や上海、深圳の経済規模はすでに香港を超える。このため、共産党指導部は香港から経済の活力が奪われる危険を冒しても、統制を強める方が利点が大きいと判断しているにちがいない。
しかし少子高齢化が猛烈な勢いで進むなか、中国の経済成長は将来、さらに減速を強いられる。そうなったとき、「香港の価値を中国は再評価せざるを得なくなる」(トン前米香港総領事)。
中英によって返還式典が開かれた1997年6月30日、香港は雨が降っていた。
「香港は中国にとって金の卵だ。握りつぶすことはないと思いたい……」。当日、筆者が現地を取材した際には、住民からこんな不安の声が聞かれた。
このままいけば、香港は「金の卵」ではなくなる。むしろ中国の国際評価をおとしめるショーケースになるだろう。