◎序説
饗宴ーー『共に飲む』
フィロソフィア(知恵の愛)ーー
それはむしろ突如として啓示されるのであるーーもっともこの啓示はけっして骨の折れる思索の準備過程を経ずして到達し得るものではないけれども。ここにおいて彼は美の本質にじかに『接触し』またはこれを『直観』する。
それだからこそ彼はここでもその師から継承した、易より難へ、日常卑近な事例から高尚なる学問的認識へと進むという『漸進主義』を採用したのである。
◎アポロドロス 友人
さて次に成れるは
永遠にゆるぎなき万物の座なる、
広胸(ひろむね)ガイヤ(大地)と
エロスと。
すなわち男性は本来太陽から、女性は地球から、また両性を兼備したものには月からーー月も地球と太陽の両者に与っているからーー出たのである。
人の世には平和(やすらぎ)を、
海原には鏡なす静けさを、
暴風(あらし)には休息(やすみ)を、
憂き身には熟寝(うまい)を
エロスは、善いものや美しいものを欠いていればこそ、正にその欠いているものを欲求するのだ。
労苦に、堪える力にかけては、僕のみならず、全軍中一人として彼に及ぶ者はなかった。
◎あとがき
本篇を邦語に移すことが難事中の難事であり、ほとんど不可能事に属することをますます痛感するに至った。
【聖教2015.4.2】
師ソクラテスを主人公とする膨大な著書で、弟子プラトンが示したことは、何であったか。
小林氏は、それを「どうあっても戦うといふ精神」であり、これこそが「真の人間の刻印である」と論じておられた。
師弟とは、究極の人間の絆である。魂と魂の真の触発であり、交流だ。