「怖いんは、お前がちゃんと自分の目で人を見ようとしとるからじゃ。うまくしゃべれんのは、お前が間違(まちご)うたことが言えん正直者だからじゃ。俺には分かるぞ。お前は、よーう、人を見とる。本当は誰よりも強く、人を知りたいと思うとる。誰よりも強く、誰かと出会いたいと、心の底から願(ねご)うとる」
「……私は『坤輿図職(こんよずしき)』という本で、十七のときに、ワシントンという人物を知った。海の向こうの、清国よりもさらに遠くにあるメリケンという国をエゲレスから独立に導いた男です。……」
「皆に問いたい。『人は、なぜ、学ぶのか?』私は、こう考えます。学ぶのは、知識を得るためでも、職を得るためでも、出世のためでもない。人にものを教えるためでも、人から尊敬されるためでもない。……己のためだ。己を磨くために、人は学ぶんじゃ」
「……この世の中のために、己がすべきことを知るために学ぶのです」
「……だが、急(せ)いてはならん。人は、古いもの、慣れ親しんだものを容易には捨てられない。変わることを恐れるのもまた、人の心である。焦らずとも、まことに変わらねばならぬときには、変われるであろう。……」
「お前には人と人を出会わせる、不思議な力があるかもしれんのう…………」