名字の言
2014年 10月30日
重度の自閉症の東田直樹さんが、13歳の時に執筆した著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』が海外20カ国以上で翻訳され、注目を集めている▼東田さんは日常会話も困難だったが、母親と共に訓練を重ね、文字盤などを使って、思いを表現できるように。ひもとくと、苦悩の深さと同時に、内面の豊かさに驚く。「普通の人になりたいですか」との質問に答えている。「僕はこのままの自分を選ぶかも知れません」。なぜなら、障がいの有無にかかわらず「人は努力しなければいけないし、努力の結果幸せになれることが分かったから」▼障がい者自立の支援組織「プロップ・ステーション」を設立した竹中ナミさんは、「障がいがある人」を「チャレンジド」と呼ぶ。米国発祥の言葉で、?挑戦する使命を与えられた人?との意味だ▼竹中さん自身にも重症心身障がいの娘がいる。娘を通して、「人間は生きる速度が異なる」ことを学んだという。だから「人と比べる必要なんてない」。大切なのは、昨日より今日の自分が、どれだけ挑戦できたかだ、と▼一人として同じ人はいない。成長の速さも千差万別だ。相手を信じ続けること。相手の速度に合わせて、挑戦を支え、励まし続けること。それを「一人を大切にする」というのだろう。(芯)