四五 雷横と朱仝(しゅどう)、迫られて梁山泊にのぼる
「しかもすごいべっぴんですぜ。ぜひ行ってごらんなせえ」
「これ、むすめや、お前、町方のお人と土百姓とを見分ける目もないのか。いつまでそんな男にこだわってるんだ! もっとものわかりのいいお客さんにおねがいするがいいぜ」
「何だと! おれがものわかりがわるいというのか!」
知事はたちまちカンカンにおこって、雷横を逮捕し、首かせをはめて、町のまん中にさらしものにした。
「わたしは六十を越したのに、杖とも柱とも頼むたったひとりのせがれがこのありさま。どうぞ節級さん、お願いじゃ、これまで兄弟づきあいをして来たよしみに、せがれのことをよろしくお頼みします」
「…おれの方は、貴公を逃がしてやったからといって、けっして死刑になる心配はない。それにおれには両親もいないし、役所に使うくらいの財産もある。おれにはかまわず、さあ、はやく行ってくれ」
「この犯人は牢城営にやらずに、この役所で使うことにする」
「あにき、ちょっと」
「貴公はどうしてここへ?」
「呉先生はどこに?」
「ここにいますよ」
柴進(さいしん)「貴殿をぜひ山寨にお迎えしたいというのですが、貴殿がどうしてもいやだとおっしゃるので、わざと李逵に坊っちゃんを殺させて、まず帰心をしたら、山にのぼらざるをえないようにしたのです」
呉用と雷横「すみません。これもみな宋公明あにきの命令によったことです。山寨においで下さればわかります」
朱仝「諸君の好意からでたこととは思うが、それにしてもちとひどいなあ!」