官兵衛「まともに戦っては万に一つも勝ち目はない」
父「考えるのだ、官兵衛」
自分を3倍に見せる戦術
それでも敵は5倍の勢力だ。
英賀浦へ上陸した毛利軍は、5倍の兵力に安心しきって姫路城近くまで迫ってきたところに、官兵衛は正面からの突撃を敢行する。
『黒田家譜』には「まっ先きにおめいてかかる」 と語るように、先頭に立って兵を切り込ませた官兵衛は、急襲に驚き混乱する毛利兵をさんざんに切り捨てた上、一旦、兵を引く。
が、休む間なく、再び、兵を督励し突撃を仕掛けた。
敵が引いたと思ったところに、二波目の突撃を受けた毛利兵たちは、官兵衛軍とは別の新手の援軍が現れたと勘違いし、恐怖につつまれ、一層、混乱する。そこへ、ホラ貝の音や鐘や太鼓を叩く音が、姫路城から聞こえてくるのに目をやった毛利兵達は愕然とする。
次々と幟が立てられようとしているではないか。ホラ貝も鐘も太鼓も、はためく幟も、もちろん、官兵衛があらかじめ入れておいた農民たちの仕業だ。毛利兵たちは、ここに及んで、まださらに後詰めの兵力が温存されていると、恐怖を増幅させ、遂には潰走する。
後代に言う「英賀合戦」。知略だけでなく、白兵戦における強さ。勝機をつかむための軍師・官兵衛が持ち合わせた天性の勘を、まざまざと見せられる合戦だ。
合戦の次第について報告を受けた信長は、官兵衛の戦いぶりを賞賛する書状を残している。