永遠の0(ゼロ) 第四章 ラバウル
ラバウルは赤道を越えたニューブリテン島にあります。日本から六千キロも離れた基地です。
太平洋戦争初期の零戦の力は圧倒的でした。…たいていの敵機は巴戦に入って、三度旋回するまでに打ち墜とされました。
たしかに当時の日本はまともな自動車さえ作れない国でした。ところが零戦はそんな三流国が生み出した奇跡の戦闘機だったのです。
「やられる!」と私は思いました。
その時、私を狙っていた敵戦闘機が突然火を吐いて吹き飛びました。…次の瞬間、私の目の前を一機の零戦がすごいスピードですり抜けました。二番機の宮部機でした。…何という凄腕!何という早業!
「敵を落とすより、敵に落とされない方がずっと大事だ」
「それともアメリカ人一人の命と自分の命を交換するか?」
「では、何人くらいの敵なら、交換してもいい?」
「馬鹿」
「てめえの命はそんなに安いのか」
「だから、とにかく生き延びることを第一に考えろ」
「家族の写真です」
「清子と言います。清い子と書きます」
「妻はマツノと言います。清子は娘の名前です」
「娘に会うためには、何としても死ねない」
海軍設営隊が未開のジャングルを切り開き、一か月もかけてようやく滑走路を作った途端、ガダルカナルは米軍の猛攻を受け、完成したばかりの飛行場を奪われたのです
米軍は滑走路が出来るまでずっと待っていたのです。…味方はあっという間に全滅しました。
ラバウル小唄
さらばラバウルよ
又来るまでは
しばしわかれの
涙がにじむ
恋しなつかし
あの島見れば
椰子の葉かげに
十字星
船は出てゆく
港の沖へ
愛しあの娘の
うちふるハンカチ
声をしのんで
心で泣いて
両手合わせて
ありがとう
波のしぶきで
寝れぬ夜は
語りあかそよ
デッキの上で
星がまたたく
あの星見れば
くわえタバコも
ほろにがい
赤い夕陽が
波間に沈む
果ては何処ぞ
水平線よ
今日も遙々
南洋航路
男船乗り
かもめ鳥