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ハイテク企業優遇税制の現状と課題

2013年10月08日 (火) 15:44
ハイテク企業優遇税制

金さん
国慶節明けの仕事、お疲れ様。
ハイテク企業認定についての論評が掲載されていましたので、レポートとしてまとめてみました。
一通り読んでおいてください。
また丁さんにも、概略を通訳しておいてください。
ハイテク認定企業のほとんどがあとで追徴課税されるなど、制度自体の信頼性に問題がありそうです。
私は明日、中国国家税務総局OBの話を聞くために、東京に来ています。


レポート:
ハイテク企業優遇税制の現状と課題
月刊国際税務2013.10月号
上海UAコンサルティング
執行董事/公認会計士 鈴木泰伸氏

【要旨】
中国におけるハイテク企業優遇税制(特定技術を有する企業所得税率を25%から15%にする優遇税制)は、制度施行6年目を迎え、ここにきて制度のあり方、運用方法を見直す転換期にあるといえる動きがでてきている。

内外不差別で適用され、企業所得税法の目玉であると同時に、組立加工製造業を中心とした「世界の工場」たる中国が、高付加価値産業への転換を目指すための税法的支援政策であるといえる。

各地の招商部門(投資誘致部門)は、ハイテク企業優遇税制の企業数を用いて、自らの地域の先進性をアピールするなど、制度が目的とする研究開発型企業の設立推進とはかけ離れていて、既存企業のハイテク認定を緩和する措置を以て数を確保する傾向にあった。

各地のハイテク企業認定部門(科学技術委員会)は、税法・通達で規定された質的、量的基準を弾力的に解釈し、本来はハイテク企業と認め難い企業に対しても、ハイテク企業認定が与えられて適用されてきた。

◎2009年に審計署で行ったハイテク企業適合調査では、116社中85社が不適合とされ、過去に享受した優遇税率10%部分、36億元強の税額が追納された。

◎2011年も、148社のうち多くの企業(会社数は不明)が不適合とされ、27億元弱の税額が追納された。

◎科学技術部門は2012年末までに、北京、上海、天津、江蘇省、広東省を中心に一千社以上の企業のハイテク企業認定を取り消している。

密告などに基づき可能性の高い企業を中心に調査を行ったとはいえ、立ち入り調査件数に対する不適合率が70%にものぼり、遡及追納税額が、1社当たり数千万元に至るなど想定外の結果である。

2012年末においてハイテク企業認定を受けている会社は6万社にのぼり、当該企業数を売上高2000万元超の製造業30万社と比較した場合には、相応の売上高のある会社の2割、10社に1〜2社はハイテク企業認定を受けている計算になる。果たしてそれほどまでに中国にハイテク企業が存在しているのか、大いに疑問である。

ハイテク企業が享受してきた税額優遇は、累計で二千億元(日本円約3兆円)にものぼっており、税収の逼迫している昨今の財政事情において「埋蔵金」とも言える財源が眠っているともいえそうである。

このような現状を踏まえて、2012年1月に「ハイテク企業認定管理業務検査の拡大に関する通達」(国科発火【2012】1220号通達)が公布されており、各地の認定機関(科学技術委員会)は、法の基準に基づきハイテク企業認定が厳格に適用されているかを自ら評価し、その後、科学技術部門、財政部、国税部、地税部からなる「全国ハイテク企業認定管理業務プロジェクトチーム」は重点検査を行うべし、と規定されている。

認定機関では
・国で定めた規定に反する独自の基準を定めていないか
・会計・税務事務所が必要な資格を有しているか
・専門家の選定が適切であるか

会計・税務事務所では
・対売上高研究開発費用比率及び売上高ハイテク製品売上比率の特定項目監査報告書の正確性に問題はないか
・報酬が規定に基づく妥当なものであるか

技術専門家では
・評価意見及び評価点数の付与が厳格に行われているか

企業では
・ハイテク製品収入、研究開発費用、研究開発部門人員集計などの金額、数値が正確であるか
などの項目があげられている。

これまで、ハイテク企業認定の申請を仲介してきた会社の報酬体系は、節税額の××%という成功報酬型が少なくない。

当該報酬体型は自主調査で不適合とされる類いのものであろう。

仲介会社が特別項目監査報酬のみでハイテク申請を代行するインセンティブは少ない。

リスクは認識しながら、監査報酬は規定報酬で受け、別契約で申請を受けるかどうか、来年度のハイテク申請までは時間があり、どうなるかは現時点において方向性は見えないものの、仲介会社が自社のリスクを認識して積極的に動かないと、企業自らがハイテク申請をすることになる。

但し、特定項目監査は会計・税務事務所に依頼する必要があり、合法意見を得られない可能性もある。

来年度にハイテク企業認定の更新を迎える企業にあっては、自社の技術の先進性、各量的基準を充足しているかの判断を、過去に促われず今一度厳格に見直す時期にある。

潮目が変わったかどうかの判断は未だできないものの、潮目の変化を見極める時期であることは確かである。

東京行き上空にて
2013.10.8


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