第48回全国統一研修会
平成25年9月6日(金)10:30〜16:30
税務調査に役立つ紛争予防税法学
─国税通則法の改正を踏まえて
講師:
専修大学法学部教授・弁護士 増田英敏氏
主催:九州北部税理士会
プロローグ
紛争予防学の核心は裁判官の法的判断の構造(リーガルマインド)を学ぶこと─ぶれない税理士への第一歩
◎裁判官の法的判断の構造学ぶことは、無駄な紛争の解決に役立つ
─なぜか
戦わざるを得ない問題
勝てるかどうか
俺の感じでは勝てる─これはどう思う?
あの先生はこれを否認すると言っている
説明の仕方を学ぶ
1.課税当局
2.基礎理論
3.税理士の対応
税法の実務体系
日々の取引
記録・帳簿…課税要件…課税標準
↓
申告…確定…申告納税制度
ちゃんと申告しているかどうか
国税庁…税務調査…徴収…公平な課税を担保
個人情報の中でも…プライバシイ…平気でどんどん…憲法…14条租税公平制度
☆質問検査権…必要がある時にできる…強制調査ではない…これは質問検査権の行使ですか?…知るか!…調査間の態度が変わった…若気の至り…署長は29歳…つぶすことができる…納税者の権利保護…法律
…租税法律主義…納税者のため…フランス革命…税理士のため…国税と対等に渡り合える
国税通則法の改正で手続き規定が整備された
必要があるとき…数字の異常性
…見解が一致しない…処分…争訟…取消訴訟
…勝てそうですか?…申告納税制度
藤山裁判…国家と納税者では国税の方が圧倒的に強い
証拠収集…主戦場
『租税法実務を法の支配の下に』予測可能性の確保により税理士実務における紛争予防が実現される。
タインズ
国税局発信の「調査に活かす判決情報」に見る課税当局の変化
…調査官の教育…フライトシミュレーション
…訴訟型社会の到来…「訴訟に耐えうる課税処分」…
税務調査の目的は?…合理的な課税の担保…訴訟に耐えうる調査…適性手続きの保証…いい証拠を集めること
…事実がどうだったのか
…どうやって立証するか
…証拠の強さ
税理士の職務は?
…税務調査に耐えうる証拠・収集・保全
…例:土地の売買…契約書は?…銀行経由で!…
…例:生前贈与…銀行
☆果たして真意に基づいて作成されたものか
…多くの間接証拠
固定資産売却益2億1000万円
土地売買契約書がほかに2通…不自然さ…間接証拠を積み上げ…売却した事実がない…虚偽の契約書→処分・決定→不服→訴訟
※証拠はタイムリーに作っておかなければならない
☆営業権の譲渡損2300万円の損益通算は…事実は存在しない…処分の無効訴訟
…領収書の日付が振り込み金受取書の日付が違う…※係官…領収書及び賃貸借契約書の用紙を作成したK株式会社に製造年月日を照会→記載された年月日以後!
…譲渡損の発生を根拠付ける証拠が乏しい
…本契約が存在しなかったと認定したことには十分な合理性が認められ
…仮にこれが客観的に誤りであったとしても、本件公正処分成立の当初から、これが外形上、客観的に明白であっとは到底いえない。
所得税法28条 給与所得とは
給与所得の3要件
※要件をきちっと押さえて証拠収集
(午後)
☆税務調査
建前は課税公平の原則
本音は?
…取消訴訟を前提にして証拠資料の収集
領収証の作成会社に調べて作成日付前に作られていることを突き止め相手を撃沈
インターネット…相談に来る前に調べてくる…これ行けますか(勝てますか)…
P.14
税理士の多くは商学部出身者により占められている。
会計は強いが法律は苦手と公言する税理士も少くない。
しかし、税理士が税法の法律専門家であることを否定することはできない。
否認→反論→平行線→感情論
→主張する側の背景にある力の大きさにより勝敗が決せられる→税理士は不利な立場に
※強大な組織を背景とする課税当局側の調査官の主張が議論を制する
☆→議論を法の支配のもとに!
法の目的である正義の意義は、強者が弱者を理不尽に支配していくことを阻止し、両者の関係を公平かつ対等に
…事実認定
…課税要件
…要件事実
※法的三段論法
…専門家責任…自分の感じでは…×…法的考え
2 租税正義と憲法原理の構図
─租税憲法学の系譜
租税正義
=租税公平主義
→所得税法─法人税法─相続税法
租税法律主義とは
…恣意性の排除
憲法30条 国民の納税の義務→国民
憲法84条 租税法律主義→国
税務署に聞かなくても法律を読めばわかる
文理解釈、主旨解釈、
農地転用決済金事件…100万円を譲渡経費できるか→所得税法33条…通達に書いていない…転用できることが契約条件(文理解釈)→本人訴訟→1・2審敗訴
→最高裁:譲渡にかかった費用とは、客観的に立証できれば問題ない。
通達全文…硬直的運用×弾力的に運用しなさい
通達に書いてなければダメか
列挙、例示、
取引相場のない株式:通達→著しければ時価
解釈の指針
租税法律主義と租税行為主義
P.23
節税・租税回避・脱税の境界
─納税者の意図はどう評価されるか
節税:租税法規が予定した方形式を選択することにより租税負担を軽減する行為
…5年経過後に土地を譲渡は
租税負担:『異常な方形式を選択』→税軽減
…
脱税:偽りの…
A←B 4億円
A→B 7億円
同日に2つの売買契約
税務署…実質は交換:時価10億円
1審:納税者の負け…交換契約:課税公平…納税者の予測可能性
2審:この契約は仮想ですか?…納税者の選択にない交換に引き直して課税はできない…法的根拠に基づいて課税→引き直し課税は許されない
→上告
…不受理確定:法的根拠なしに否認できない
※仮想…形式と実質が違う
所得税法59条
情報は納税者がアクセスできる
判例か単なる事例か
…単なる判例では!…相手が強ければ引く!
税理士の選別、差別化:法的論理的に説明できるか…退職慰労金否認…修正申告…二重課税…修正申告でも更正の請求できる…200万円請求高…私が立ち会ったからこれだけですんだ
→損害賠償訴訟中
武富士事件
…住所概念と租税回避
…生計を一にする配偶者等
みなし贈与…著しく低い価格で譲渡
民法学者…贈与していないのになぜ贈与税?
税法…贈与税の租税回避行為
夫妻が保有
オランダ所在の子会社株式を
香港居住の
長男に
租税回避の密議が指摘されている
オランダに会社を作る
住所を香港に
生活の本拠
1住居…ます香港にアバート
2職業…オランダに会社を作る→贈与
3親族
4財産
の4つの客観事実
…(国税)贈与税回避のための行為
…主観的な居住意思は…必ずしも常に存在するものではなく、…意図は関係ない!…住居の事実
…最初から租税回避が目的…香港に居住する意思は最初からない
1審:居住意思は関係ない…勝訴
2審:居住意思を総合的に判断…敗訴
最高裁:租税回避行為は立法措置により阻止すべき…租税法律主義を優先…勝訴
納税者権利憲章…最初はすばらしい規定だったが、だんだんと減らされ、最後はすべて廃案
…税務調査手続きのみが整備された。
納税者と税務署との手続き規定は…質問検査権のみ…ほとんどなかった
必要性があるとき…?
嫌がらせの調査、制裁的調査
国税通則法の改正74条の9(調査の通知)
74-10事前通知を要しない場合
…違法又は不当な行為を容易にする場合
※税務調査を法の平等の下に置く
(質問検査権の行使)
攻撃と防御…準備不足で負ける場合がある
…いつでも調査に来てもいい─×
※紛争を未然に防止する
国通74-11
修正申告等の勧奨…不服申し立てはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明…その旨を記載した書面を交付しなければならない。